声帯

2023.06.29



色々な原稿の下書きを書き進めておりますが、兎にも角にも、まずは声帯自体の基礎知識をご紹介した方がいいかしら・・ということで今回のタイトルとなりました。声帯については、今後も折々に触れていくことになると思いますが、今日は、声帯に関する ”素朴な疑問” にお答えしていきたいと思います。

声帯って、どこにあるの?

声楽を学んでいる音大の学生さんでも意外に正確に答えられないこの質問ではありますが、皆さんは声帯はどこにあるのかご存知ですか?

ヒントは、こちらの写真から↓



右側は相当辛そうですが・・


答えは、喉頭隆起(喉ぼとけ)の裏、です。写真をご覧いただくと、喉頭隆起の右側に裂け目のようなものがあるますが、これが声帯です。
ちなみに、右側の模型の声帯にはポリープがあるようですね・・。

さて、これを実際の人間による動画でご覧いただくことといたしましょう。
口からカメラを入れて覗き込んでみた動画がこちら↓
(生々しい画像が苦手な方は、スルーしてくださいね。)​

youtu.be/AMZJ9E7ze7c


声帯の大きさは、どれくらい?

声帯の振動する部分は ”膜様部(まくようぶ)” と言いますが、実際の声帯に物差しを当てて調査した報告は、2021年に初めて発表されました(!)。**
1ミリ単位の物差しで71人の声帯を測定されたものですが、男性は平均で11.4mm、女性は平均で10.1mmという結果でした。
個人差が大きいのでバラつきはありますが、身長・体重との相関性はないとのこと。(顔の大きさとは関係があるのでは・・・いずれ研究結果が出るかも?)

女性より男性の方が、膜様部が長いのは確かなようです。
一方、声帯長(声帯全体の長さ)の男性平均は14.1mmで、女性平均は13.0mmという結果であるものの、統計的に有意な差ではなかったそうです。
・・・ということは、「男性の方が”声帯”が長い」というのは、厳密にいうと正確な表現ではないかもしれません。

(**第122回日本耳鼻咽喉科学会 宮本真先生・齋藤康一郎先生・中川秀樹先生)

- 声帯はどんな振動の仕方をしているの?
実際の動画はこちら↓

https://youtu.be/fXLk0x9OfDM

上記の動画は、ストロボスコピーを用いてスローモーションで撮影したものです。

声帯は1秒間に、50回〜1000回ほど波打ちます。
オーケストラがコンサートの初めにチューニングで鳴らす音・A4の音程で、約442回。つまり、実際には周波数と同じ回数波打っていますので、肉眼でその波動を捉えるにはかなりの動体視力が必要となります!!

肺から気管に流れてきた空気の流れによって生じた気圧の変化で、声帯の両側の縁は引き寄せられ波動が生じます。また、声帯の周りの筋肉によって、声帯は引っ張られたり、緩められたりしながら、音の高い・低いの違いを生むことができます。

低い音を出す時には、声帯はコロンとした丸みを帯びた形をしていますが、高い音の時の声帯は、引っ張られて直線的な形になっている様子が、動画でご覧いただけるかと思います。


「お魚時代はエラでした。」

人間の体の中で、小さな小さな”声帯”という臓器が、1秒間に何百回とハタハタと波動を起こしながら働いてくれているなんて、なんてケナゲなんだ…と愛おしさを覚えます。
元々は ”エラ” 部分だった声帯。その進化と日々の営みのおかげで、会話をしたり、歌を楽しんだりできること、時々思いを馳せてあげてくださいネ。




-この記事は、過去にnoteに掲載した記事です。