まっさら ー 声の音 ー

2024.05.01



楽器の弾き方を習うように、声の出し方を知る機会って、
意外とありませんよね。

私たち、生まれた瞬間から呼吸を自然に始めるように、
声も、その瞬間から自然に出ますものね。

あらためて思いを馳せてみると、声との付き合いって長いですね。

生まれて直ぐ楽器を弾く人はいませんが、声に関しては誰しも「声を奏でる」天才。
本能と密な繋がりのある楽器と言えるかもしれません。

言葉を耳から覚えるように、
「声の音」も、成長の過程で触れた声に影響を受けることが多少はあるのかもしれないですね。

国や地域、人種によって声色の傾向があるように私の耳には聞こえていますが、
顔や骨格の差異だけでなく、受け継がれてきた音の感性というものもあるのかもしれないな、
と妄想は広がります。

それには環境や家屋の響きが大きく関係しますよね。

「日本で歌っていて『なんだか調子悪いな』と思って欧州にレッスンを受けに行くと、
『あれ・・そうでもないな・・』となってしまう」という話は、これまでよく耳にしました。
おそらく、建材による響きの相異が大きな要因だと思われます。

そして、これは良し悪しではなく、特徴。
日本古来の楽器は、こうした響きの中で生まれきた楽器であって、
私たちの血には馴染みの響きです。

そういう意味では、「うた」もジャンルによって求められる響きは異なるとは思いますが、
人は聞こえている「声の音」をモニタリング・自動調整しながら声を出しますので、
やはり、ある程度響きがある環境の方が楽に声を出せる、
つまり、力まずに声を出す方法を習得するには、響く空間のサポートをいただけた方が良いと考えています。

一年前に叶ったクリニック移転、その一番の目的が、
発声調整を行う空間の響きを良いものにする、ということだったのは、こんな理由からです。

今の場所と出会ったのは、ある不動産会社のAさんのおかげでした。
契約に関することなので詳細は書けませんが、
私たちのニーズ、音や患者様を思う気持ちをいつの間にか共有してくださったAさん、
彼の心ある対応に感動し、自ずと「この方に、うたを歌って差し上げたい」という想いが湧きました。

まだ改装前のガランとした空間で突然のミニコンサート。
ある歌を1曲聴いてくださったAさん、
思いがけないことに、涙を流してくださいました・・。

私にしても、シンプルに「うたをプレゼントしたい」と思ったのは初めてのことだったかも。

まっさらな気持ち、というのは突然に、
そして、幾つになっても訪れるものですね。




関連記事

クリニック移転

赤坂の空とピアノ

ありがとうございました