按配ーγループー
2024.12.15
按配、とは発声動作に何が一番大切かと考えたときに思い浮かぶ言葉です。
“声帯の動作”の按配を習得する、とはどういうことか、と言うと、
「ガンマ神経によって伝えられる筋紡錘のセンサー感度調節を習得する」
ということ。
ん??ちょっと難しい言葉が並びましたね。
でも、もしよろしければ読み進めてみてください。
特に、「発声練習が大切なのは分かるけど、どうも続かない・・」というアナタ。
練習するって体の中で何が起こっていることなのか、
納得したら継続に繋がるかも・・という方々は、ぜひ一緒に探求しましょう。
実はこの話題、発声の最新情報が満載ですよ。
さて、声帯の話の前に、
まずは、動作・運動の調節ってどういう仕組みなのか確認。
発声しましょう!はイコール、運動の動作をコントロールしましょう!
ということですね。
ある高さで、ある強さで、声を出す時には、筋肉は”按配”を調節することが必要です。
筋肉をいいい按配に収縮させなければ、
声に限らず、思いもよらぬ動作になってしまい困ってしまいますよね。
では、その按配を適度なものにする仕組みは、どうなっているのでしょう。
まずはなんと言っても司令塔である大脳から始まります。
大脳からの指令、「動作をしよう!」は脳幹・脊髄と降りて行き、
最終的には末梢の運動神経へと伝達されます。
その刺激が筋肉を収縮させるのですが、それだけではいい按配で収縮できません。
それぞれの動作の中で、力が入りすぎにも抜きすぎにもなっていない、いい按配で力を入れるために、
我々の体には、反射的に按配をコントロールする機能が備わっています。
そのために重要なのが、筋肉の中の「筋紡錘」です。
筋紡錘とは、筋肉の張力センサー。
その時々の筋肉の力の入り具合を感知し、それを筋肉の感覚神経にのせて、
中枢(脊髄)へと戻します。
この感覚神経は、固有感覚。意識には上らないものです。
脊髄は、脳には情報を上げず、今度は脊髄反射として、
感覚情報に基づいたいい按配の収縮をするための情報を運動神経に送ります。
この、固有感覚フィードバックによる運動コントロール、ものすごいスピードで行われるらしく、
筋紡錘からの固有感覚神経も、運動神経も、一番太くなっているのだそう。
この反射的コントロールなしには、肉体を程よく動かすことはできないのですね。
さて、私達がいい按配の動作を習得するとはどう言うことなのでしょうか。
それは、練習によって大脳や小脳に、「運動プログラム」のようなものが作られるからだと考えられていますが、
運動プログラムの内容を具体的に筋肉の力の按配のコントロールとして伝えるには、
先ほどの「筋紡錘」が大きな役割を果たします。
私達の体は、筋紡錘のセンサー感度を調節することで、按配のコントロールをしていると考えられています。
脳から筋紡錘のセンサー感度調節情報を伝える導線となる神経を「ガンマ(γ)神経」と言います。
この神経は、先ほどのフィードバックを担う神経よりもちょっと細いそうです。
ここまでの話をまとめてみますと、
脳→脊髄→筋紡錘→脊髄→筋肉 の言わば ”のの字ループ”。これを
「ガンマ(γ)ループ」と言います。
この循環が、コントロールを担っているのですね。
さて、以上のことは、手など、首より下の体を動かす仕組みとして
既に証明されているのですが、
「声帯でも、声帯〜延髄間で同じことが行われている」という説を発表したのが、
マイケル・ピットマンさん(2014年)。
上記は、まだ定説ではありません。
が、この説はおそらく正しいことが、声のクリニック赤坂での研究で分かってきました。
なぜ、それが分かったのか。
長くなりましたので、この続きはまた次回に。
按配は中庸とも言い換えられますでしょうか。
陰でも陽でもなく。
生き物に元々備わっているバランス感覚に気づくことも、
マインドフルのなせる業、なのかもしれません。